
長年激しく鎬を削ってきたマンチェスター・ユナイテッドとマンチェスター・シティ。ともにマンチェスターを本拠地に置くことから「マンチェスター・ダービー」と呼ばれる両チームの戦いを試合を分けたターニングポイントとともに分析していきます。
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【試合前分析】崖っぷちのマンチェスター・ユナイテッド
長年マンチェスター・ユナイテッドが圧倒してきたライバル対決ですが、アブダビグループの買収によりマンチェスター・シティが競争力をつけたことで、2010年代に入ってからは拮抗した戦いが繰り広げられています。
それどころか近年は力関係が逆転した感すら漂います。ここ10年でマンチェスター・シティがプレミアリーグを5回制覇した(2011-12、2013-14、2017-18、2018-19、2020-21)のに対し、マンチェスター・ユナイテッドはわずかに1回(2012-13)だけ。リーグの成績ではマンチェスター・ユナイテッドはマンチェスター・シティに圧倒されています。
この力関係は直接対決の勝敗にも現れています。ここ10年のリーグ戦での対決はマンチェスター・シティが11勝3分6敗と大きく勝ち越し。さらには相手のホームで行われたダービーではマンチェスター・シティが6勝2分2敗と、こちらも大きく勝ち越しています。
今節のマンチェスター・ダービーはマンチェスター・ユナイテッドのホームであるオールド・トラッフォードで行われるだけに、ホームチームにとって不利な状況が揃っています。
しかも、マンチェスター・ユナイテッドはここにきて絶不調。前節のトッテナム戦こそ3-0で快勝したものの、10月の公式戦は1勝2分3敗と負け越しています。オーレ・グンナ・スールシャール監督にも解任の噂が出ているという、まさに崖っぷちの状況でマンチェスター・ユナイテッドはライバルチームを下すことができるのか。まずは両チームのスタメンを確認していきましょう。
【試合概観】マンチェスター・シティが試合を完全に支配
マンチェスター・ユナイテッドのホームスタジアムであるオールド・トラッフォードで行われたマンチェスター・ダービーは、マンチェスター・シティがホームチームを2-0で下しました。試合全体を通して見ても、マンチェスター・シティが完全に試合を支配したといっても過言ではないでしょう。
マンチェスター・シティは前半7分に相手のオウンゴールで先制すると、前半終了間際にも追加点をあげて2-0で前半を折り返します。後半も相手を一切寄せ付けず、そのまま試合終了。スコアは2-0でしたが、内容はそれ以上に差がついた印象でした。
細かいスタッツを見れば、その印象が間違っていないことが分かります。
以下の表をご覧ください。
マンチェスターユナイテッド | マンチェスターシティ | |
32.6% | ポゼッション | 67.40% |
1 | 枠内シュート数 | 5 |
5 | シュート数 | 16 |
547 | ボールタッチ数 | 977 |
400 | パス本数 | 832 |
18 | タックル数 | 12 |
22 | クリア数 | 5 |
1 | コーナーキック数 | 9 |
4 | オフサイド | 1 |
1 | イエローカード | 2 |
9 | ファウル数 | 12 |
攻撃的な指標(ポゼッション、枠内シュート数、シュート数、ボールタッチ数、パス本数、コーナーキック数)を見ると、全てにおいてマンチェスター・シティが上回っていることが分かります。特にボールタッチ数とパス本数はマンチェスター・ユナイテッドの数の約2倍。それほどにマンチェスター・シティが試合を完全に支配していました。
ではなぜこのような一方的な試合になってしまったのでしょうか。
試合を分けたターニングポイントを3つ紹介して、その理由を解明していきます。
【ターニングポイント①】最初のチャンスを活かせたか
最初のターニングポイントは試合開始早々に訪れました。
クリスチアーノ・ロナウドがファウルを受けて相手陣内でフリーキックを得ます。キッカーのルーク・ショーがペナルティエリア内に絶妙なクロスを入れると、ハリー・マグワイアがヘディングシュート。しかし、フリーだったにも関わらずマグワイアが放ったシュートはゴール右横に外れてしまいます。
するとその2分後に、今度はマンチェスター・シティにチャンスが訪れます。
クリアボールを拾ったロドリがジョアン・カンセロに展開すると、ポルトガル代表ディフェンダーがエリア内に鋭いクロスを入れます。すると、クロスをクリアしようとしたエリック・バイリーが蹴ったボールは不運にもゴールに吸い込まれてしまいました。マンチェスター・ユナイテッドは運にも見放され先制点を許してしまいます。
結果論になってしまいますが、前半5分に訪れたチャンスをマンチェスター・ユナイテッドがしっかりと決めて入れば、試合展開は大きく違うものになっていたに違いありません。特にホームチームは相手チームを自陣内に引き込んでロングカウンターを仕掛ける戦いを狙っていただけに、前半開始早々に得点取っていれば(少なくとも失点をしなければ)、試合を優位に進められたはずです。
【ターニングポイント②】同点に追いつくチャンスを活かせたか
ターニングポイントの2つ目は、またしてもホームチーム側に訪れました。
前半26分にセンターバックのバイリーが相手のプレスを縦へのドリブルで搔い潜ると、左サイドバックのショーにパス。ショーが絶妙なクロスをペナルティエリア内に入れると、C・ロナウドが左足でボレーシュート。これはマンチェスター・シティのゴールキーパー、エデルソンに防がれますが、そのこぼれ球がマンチェスター・ユナイテッドのフォワード、メイソン・グリーンウッドの足元に転がってきました。しかし焦ったのかグリーンウッドはシュートを外してしまいます。グリーンウッドの前には相手選手がおらず、ゴールはがら空きでした。もし冷静に蹴れていれば、ボールはゴールネットを揺らしてたでしょう。
マンチェスター・ユナイテッドが先制を許してから、ボールはマンチェスター・シティが完全に支配していましたが、それでもホームチームは必死の守備で追加点を許していませんでした。それだけにこのチャンスを活かすことができれば、流れはマンチェスター・ユナイテッドへ一気に傾いたはずです。
ターニングポイント①で紹介したチャンスやこのチャンスを活かすことができなかったマンチェスター・ユナイテッドがこの試合に敗れたの必然だったのかもしれません。
【ターニングポイント③】試合後半に見せた両監督の采配
最後にターニングポイントは試合後半に見せた両監督の采配です。積極的に動いたスールシャール監督と選手を一切代えなかったジョセップ・グアルディオラ監督の違いが試合を大きく分けました。
前半終了間際の失点によって0-2で後半を折り返すことになったスールシャール監督は、後半頭からセンターバックのバイリーに代えてフォワードのジェイドン・サンチョを投入します。
当然、前半で2点差を付けられている、しかもライバルチーム相手に負けているのですから攻撃的な選手を入れるという選択は理解できます。しかし、そのカードがサンチョであることには疑問符がつきます。
後半開始早々のボール支配率こそ五分五分でしたが、その後はアウェイチームに自陣内へ押し込まれてしまいます。
サンチョは今シーズンにドルトムントから鳴り物入りで入団したものの、公式戦13試合出場でゴール、アシストともにゼロ。まだ期待された活躍は出来ていません。マンチェスター・ダービーというシーズンの重要局面で、流れを大きく変えるという役割は、サンチョには荷が重かったに違いありません。
その後の交代カードでも流れを変えられず。マンチェスター・ユナイテッドは主導権を一切握れないまま試合に敗れてしまいました。逆に上手く試合を運べていたマンチェスター・シティのグアルディオラ監督は、試合終了まで選手交代をせず。選手を変えずに試合の流れを常に掴み続けました。
両監督の采配が試合に大きく影響を与えたと言っても過言ではないでしょう。