プレミアリーグの試合を分析し、試合の命運を分けたターニングポイントとともに解説していく「マッチレビュー」企画。13節の一戦目は11月27日に行われたプレミアリーグ第13節のアーセナル対ニューカッスル戦をお届けします。試合をフルで見た人も、そうでない人も楽しめる記事となっていますので、ぜひ最後までご覧ください。
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【試合前分析】ともに勝ち点3が欲しい試合
11月27日に行われたプレミアリーグ第13節のアーセナル対ニューカッスル戦は、アーセナルのホームであるエミレーツ・スタジアムで行われます。
開幕で3連敗を喫し、どん底を味わったアーセナルですが、その後は持ち直し徐々に復調。平均年齢が25歳と若いスカッドにも関わらず、プレミアリーグで順調に勝ち点を積み重ね、気づけばリーグ5位にまで昇り詰めました。
そんな中で迎えた前節のリバプール戦。強豪を相手に若いスカッドがどれだけ戦えるのかに注目が集まっていましたが、結果は0-4と完敗。負けを払拭して、再び勝ち点を積み重ねるためにも、今節のニューカッスル戦で勝ち点3は必須です。
対するニューカッスルは、ホームチームよりも深刻な状況です。リーグ戦12試合を消化して勝ち星はゼロ。勝ち点6で最下位に沈み、昨シーズンからチームを率いてきたスティーブ・ブルースも解任されています。そんな中で希望があるとすれば、金満オーナーがクラブを買収したこと。サウジアラビア政府系の投資ファンドが新たなオーナーとなり、チームの改革に打って出ています。
その改革の第一歩がエディ・ハウ新監督の招聘。かつてボーンマスを3部からプレミアリーグ昇格に導いた若手監督のもとチームの立て直しを図っています。とはいえ、監督が交代したからといって、すぐにチームは変わらないでしょう。アーセナルという強敵相手ですが、今節はなんとか勝ち点3を持ち帰りたいところです。
それでは、スタメンを見ていきましょう。
参照:スタメン表
アーセナルの変更点は1箇所。アレクサンドル・ラカゼットに代えて、マルティン・ウーデゴーアをトップ下に起用。ミッドウィークに行われるマンチェスター・ユナイテッドにむけてフランス代表ストライカーを温存した形でしょうか。
対するニューカッスルは、前節から3枚の変更。怪我で長期離脱していた守護神のマルティン・ドゥブラフカがゴールキーパーに復帰。ヤコブ・マーフィーに代えてライアン・フレイザー、キアラン・クラークに代えて、エミル・クラフトがスタメンに起用されています。
【試合概観】アーセナルが終始試合を支配する
前節の大敗を受けて動きが鈍くなることが予想されたホームチームですが、実際は立ち上がりから試合を支配しています。ただ決定機と言えるほどのチャンスは生み出すことができません。何度かロングシュートは放ちますが、ニューカッスルの守護神ドゥブラフカを脅かすほどではありません。そのまま前半は終了。0-0で後半に突入します。
このまま試合終盤に入れば嫌な雰囲気が漂い始めるところですが、流れを変えたのは若い力でした。左サイドでブカヨ・サカからパスを受け取ったエミル・スミス・ロウがヌーノ・タバレスに楔を入れます。するとタバレスがペナルティエリアに侵入したサカにスルーパス。イングランド代表の俊英が左足を振りぬくと、ボールは逆サイドネットに突き刺さり、先制点を奪うことに成功します。
先制してしまえば、試合は俄然ホームチームが有利。点を奪うためにニューカッスルが攻めに転じますが、逆にアーセナルにスペースを与えてしまうこととなります。すると、66分にアーセナルに追加点が生まれます。
ショートカウンターをしかけたホームチームがボールを右サイドに展開すると、右サイドバックの冨安が相手ディフェンスラインの裏にロブパス。オフサイドラインギリギリで抜け出した途中出場のガブリエウ・マルチネッリがそのパスに反応して、ボレーシュート。キーパーのタイミングをずらしたシュートはゴールに吸い込まれていきました。
こうなるとアウェイチームは戦意喪失。指揮官は攻撃的なカードを切って、なんとか状況を打破しようとしますが、ニューカッスルに2点ビハインドをひっくり返せるほどの力は残っていませんでした。試合はそのまま終了。前節でリバプールに完敗した影響を微塵も感じさせなかったホームチームが2試合ぶりの勝利を手にしました。
ではなぜ、このような結果になったのでしょうか。これからは試合を分けたターニングポイントとともに、試合内容を細かく分析していきます。
【ターニングポイント①】アーロン・ラムズデールのセーブ
まずは以下の表を見てください。
アーセナル | ニューカッスル | |
65.6 | ポゼッション | 34.4 |
6 | 枠内シュート | 5 |
24 | シュート | 9 |
812 | タッチ | 494 |
646 | パス | 328 |
14 | タックル | 13 |
12 | クリア | 20 |
4 | コーナー | 4 |
0 | オフサイド | 3 |
1 | イエローカード | 3 |
6 | ファウル | 12 |
これは試合を通じての両チームのスタッツですが、ほとんどの項目でアーセナルが勝っています。しかし唯一、枠内シュートの項目だけ両チームの差がほぼありません。
つまり少ないチャンスの中でニューカッスルは確実に枠内にシュートを飛ばしていたということです。ジャイアントキリングは、格上のチームは数あるチャンスをものに出来ず、反対に格下のチームが数少ないチャンスをものにすることによって生まれます。
この試合でもアーセナルがチャンスをものに出来ず、ニューカッスルが数少ないチャンスをものにするという展開になりかねませんでした。それを防いだのはアーセナルの守護神ラムズデールのセーブでした。
それが顕著に出たのが前半30分のシーン。クロスのこぼれ球を拾ったジョンジョ・シェルビーが右足を振りぬくと、ボールはゴールの右隅へ。ロングシュートが決まるかと思われましたが、ラムズデールが横っ飛びで見事なセーブでチームを救って見せました。
もしこのゴールが決まれば、試合の流れは一気にニューカッスルに傾いたでしょう。またこのシーン以外にも際どいシーンがありましたが、すべてラムズデールがセーブ。攻撃面で活躍を見せたサカやタバレスが目立ってはいましたが、何度もチームを救うセーブを見せたラムズデールが陰のMVPであることは間違いないでしょう。
【ターニングポイント②】相手エースを抑えた守備網
もう一つのターニングポイントは、アーセナルの相手エースに対する守備網でしょう。ニューカッスルはエースのアラン・サン=マクシマンに自由を与え、カウンターの際にはまずサン=マクシマンにボールを預けるという戦術を取っていました。
ドリブル突破が得意なサン=マクシマンが一度前を向いてしまうと、ファウルでないと止めるのは困難です。しかし、アーセナルはそれを防ぐための戦術を取っていました。
アーセナルがボールを失うとセンターバックのベン・ホワイトと右サイドバックの冨安が猛烈にサン=マクシマンに対してプレス。さすがのサン=マクシマンも2人からプレスを受けてはボールをキープできません。
この戦術によって、ニューカッスルはカウンターをなかなか仕掛けることが出来ず、チャンスを生み出すことが出来ませんでした。やっとのことでシュートを放てたかと思えば、先述のラムズデールが好セーブ。これでは流れを引き寄せることはできないでしょう。アーセナルが試合を支配したのは、この戦術があってのことだったのです。